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12のアイデアを日野の街で実践。環境デザイン学科の学生が地域とともに考えた「世界で一番面白い商店会」

この記事の3つのポイント

  • POINT 1 昨年度の108のアイデアから12企画を選び、学生が日野の街で実践
  • POINT 2 日野駅商店会や地域の方と協働し、企画・制作・実施・検証までを経験
  • POINT 3 実践を通して、人の行動や地域とのつながりを生み出すデザインを学ぶ

アイデアを、教室の外へ

 青いエコバッグを手に街を歩く学生。ワゴンを押しながら地域の方に声を掛ける学生。空き店舗で子どもたちと一緒に絵を描く学生――。

 この夏、環境デザイン学部環境デザイン学科2年生は、日野の街そのものを学びの場に、12の地域活性化企画を実践しました。

 取り組んだのは、地域連携・社会連携のプロジェクト授業「環境デザインプロジェクトa・b」。昨年度に引き続き「世界で一番面白い商店会をつくろう」をテーマに、「環境デザインプロジェクトa」ではリサーチと実施準備を行い、「環境デザインプロジェクトb」では、当時の2年生が提案した108個の日野駅商店会活性化のアイデアから12個を選び、5~7人のチームで企画を形にしました。

 ラジオ、エコバッグ、空き店舗、水路、ワゴン、シールラリー、フリーマーケット――。方法はさまざまですが、学生たちが向き合ったのは、「どうすれば街に興味を持ってもらえるか」「どうすれば人と人の接点を生み出せるか」という共通の問いでした。 

「知ってもらう」の、その先を考える

「日野駅商店会にはどんなお店があるのか、その魅力をもっと知ってもらいたい」。

1班は、音声配信アプリ「stand.fm」を使った「日野駅商店会ラジオ」を制作しました。店主へのインタビューや店舗紹介、学生による地域イベントなどを全5回にわたり配信し、発表時点で総再生数は1,011回に達しました。

学生が意識したのは、お店の情報を並べるだけではなく、「実際に行ってみたい」と感じてもらえる番組にすること。台本では難しい言葉を避け、耳で聞くだけでも内容が伝わる表現を考えました。店舗への連絡やインタビューも自分たちで行い、相手から魅力を引き出し、それを別の人へ届ける難しさを経験しました。

2班は、商店会の情報を載せた三角形の「紹介ボード」を制作。5店舗の店内や店外に設置したところ、ボードを見たお客さんから質問があり、店主との会話につながったケースもありました。

その一方で、デザインの検討に時間をかけた結果、店舗との調整が遅れ、設置できた店舗や期間が限られたという課題も残りました。

「良いものをつくれば、それだけで人に届くわけではない」。

実践したからこそ、制作だけではなく、スケジュールや役割分担、地域の方との調整まで含めて企画する必要があることが見えてきました。

ラジオは音声だけで伝えるため、聞いただけで内容が分かり、「実際にお店へ行ってみたい」と思ってもらえる言葉選びを意識しました。取材や店舗との調整も経験し、自分から動くことや、相手を意識して伝える大切さを学びました。

1班:学生の声

2班:学生の声

紹介ボードをきっかけに、お客さんから質問があり、お店の方との会話につながったことが印象に残っています。一方、デザインに時間をかけすぎて設置店舗や期間が限られたため、企画だけでなく役割分担やスケジュール管理も重要だと実感しました。

いつもの場所を、違う視点で見てみる

学生たちの視線は、店舗だけでなく、日野の街にある「場所」にも向けられました。

3班が着目したのは空き店舗です。「日野市の空き店舗を勝手にデザインしてみた!」と題し、小・中学生と街を歩きながら、「ここにどんなお店があったらいいだろう」と自由にスケッチするワークショップを企画しました。

しかし、空き店舗の情報を集め、会場を確保し、人を集めるところまで進めると、教室で考えていたときには見えなかった課題が次々に現れました。学生たちはそのたびに企画を見直し、実現できる方法を考え直しました。

同じく空き店舗に注目した12班は、大学所有の旧コンビニエンスストア店舗を、子どもたちの遊び場「じゆうに!たのしく!おえかきラボ」に変えました。

窓拭きや草むしり、看板づくり、チラシ配りも学生自身が行い、当日は子ども25人、大人6人が参加。子どもたちが自由に絵を描き、使われていなかった店舗が、人の声や色であふれる場所へ変わりました。

7班が選んだのは、仲田の森蚕糸公園の水路です。

椅子やハンモック、水みくじを用意し、水路を「通り過ぎる場所」ではなく、「触れて、過ごしたくなる場所」にすることを試みました。実際には、子どもたちが水へ入り生き物探しを楽しむ一方、大人は水みくじには参加しても、水へ入る人は少ないという結果に。想定していた「楽しみ方」と実際の人の行動には違いがあることにも気づきました。

空き店舗の情報収集や会場確保、集客など、実際に動き始めると想像以上に課題があり、何度も企画を見直しました。それでも地域へ出て実践したことで、うまくいかないときに改善を重ねること自体が大きな学びになると感じました。

3班:学生の声

12班:学生の声

当初は、白衣や大きな実験器具を使った本格的な「ラボ」を考えていました。しかし、実際の場所の暑さや、制作・保管できる時間やスペースを踏まえて企画を変更しました。理想をそのまま形にするのではなく、場所や条件に合わせて考え直すことも大切だと学びました。

椅子やハンモック、水みくじを組み合わせ、「水路に触れてみたくなる場所」を考えました。実践では声掛けや参加者への対応も経験しましたが、水路と日野駅商店会を十分につなげられなかったことは反省点です。企画の目的を最後まで意識する重要性を学びました。

7班:学生の声

街の人に聞いてみたら、想定していなかった答えが返ってきた

 8班は、昨年度の4年生が卒業設計として制作した木製ワゴンを活用し、「移動式インフォメーションワゴン」として日野の街へ繰り出しました。

6月23日は駅前周辺、30日は市役所周辺を歩き、2日間で227人と接点を持ちました。

そこで聞こえてきたのは、「お店を紹介する冊子が欲しい」「休憩できるベンチが欲しい」「イベントが少なくなっている」といった地域の方の率直な声でした。

一方、学生が大人数でワゴンを囲むと、かえって近づきにくく見えることや、遠くからでは単に荷物を運んでいるようにしか見えないことも分かりました。

自分たちが「伝えているつもり」であることと、相手に「伝わっている」ことは違う。

6班の「歩く人型掲示板」でも、同じような経験がありました。学生自身が大きな掲示板を身に着けて街を歩き、商店会について伝える企画です。

最初は知らない人へ声を掛けることに緊張しましたが、次の実践では、まず笑顔で挨拶することを意識。徐々に地域の方との会話が生まれていきました。

掲示板やワゴンをつくることがゴールではありません。その先にいる人がどう感じ、どう動くのかまで考えることが、学生たちの次の課題になりました。

8班:学生の声

ワゴンを押して街を歩き、地域の方から商店会への印象や日野の課題を直接聞けたことは貴重な経験でした。一方、会話だけでは足を止めてもらいにくく、「少し近づきにくい」という反応も。安心して参加してもらえる見せ方や配布物の必要性に気づきました。

1回目は街の方へ声を掛けることに緊張しましたが、2回目はまず明るく挨拶することを意識すると、自然に会話できるようになりました。掲示板をつくるだけではなく、相手に合わせた声掛けや仕掛けがあって初めて交流につながることを実感しました。

6班:学生の声

「青いバッグ」が、人と店と街をつないだ

12班の活動は、それぞれ独立して進めるだけでなく、次第に班同士でもつながっていきました。

その象徴の一つが、5班の「BLUE LINK DAY ―あなたの青が、まちをつなぐ―」です。

学生たちは、「日常の中で自然に参加できること」「限られた期間でも実現できること」を重視し、商店会のイメージカラーであるブルーを使ったエコバッグを考案しました。

青い服や小物、バッグを身に着けて協力店舗を訪れると、割引やトッピングなどの特典が受けられる仕組みです。「LINK」には、人と人、人と商店、人と地域をつなぐという思いを込めました。

制作したエコバッグは200枚。予算の関係で、学生自身がバッグへのロゴなどを刷ることになりました。型づくりやスプレーの使い方を試しながら、一枚ずつ制作。完成したバッグは、4班の野菜販売や10班のフリーマーケット、8班のワゴンなどとも連携して配布しました。

当日は、「かわいいバッグですね」「どこでもらえますか?」と声を掛けられる場面もありました。

学生がデザインしたものが、地域の人の手に渡り、その人がバッグを持って街を歩く。

「自分たちが作ったエコバッグが、一瞬でも街をブルーに染め、地域に一体感を生み出せた」と学生は振り返ります。

4班は、「駅前のイベントを絶やさない」をテーマに、地場産野菜の販売と学生考案レシピの配布、七夕イベントなどを実施しました。さらに、5班の「BLUE LINK DAY」、6班の「歩く人型掲示板」、10班の「エピソードフリマ」など、ほかのチームとも連携し、駅前に継続的なにぎわいをつくろうとしました。

10班は、商店会の方から提供された品物に思い出やメッセージを添えて販売する「エピソードフリマ」を実施。売上金は商店会へ寄付しました。

9班は加盟店舗を巡る「おにごっこシールラリー」、11班は店主の仕事への思いや趣味、特技を紹介する「日野のプロフェッショナルカード」を制作。カードはワゴンや水路、おえかきラボなど、ほかの班の企画でも活用されました。

一つのチームだけではできないことも、企画同士をつなぐことで、街の中へ広がっていきました。

イベント当日は、役割分担やインタビューの進め方まで十分に詰められておらず、もっと具体的に準備すべきだったと感じました。一方で、ポスター制作や他班との連携を通して、一つのイベントが多くの人の協力によって成り立つことを実感しました。

4班:学生の声

5班:学生の声

200枚のエコバッグを自分たちで制作し、すべて配布できたことは大きな達成感になりました。一方で、作業を抱え込みすぎたという反省もありました。アイデアだけでなく、周囲を巻き込み、チーム全員で力を発揮することも企画には必要だと学びました。

シールやフライヤーは、店舗ごとの特徴を出しながらイベント全体に統一感が生まれるよう、何度も意見を出し合って改善しました。地域や店舗の方とのやり取りでは、丁寧な事前準備や、チーム内で細かく情報を共有することの大切さも実感しました。

9班:学生の声

10班:学生の声

メッセージカードを見た方から「このお店はどこにあるの?」と聞かれたとき、自分たちの企画がお店への興味につながったことがうれしかったです。一方、人工芝を敷くと見栄えは良くても入りづらくなるなど、実際の人の行動を見て初めて分かることがありました。

店舗への取材やカード制作に取り組みましたが、想定以上に制作に時間がかかり、予定していたSNSでの発信までは実現できませんでした。一方、講評では「統一感」や「集めてもらう」という新しい視点も得て、早い段階から周囲の意見をもらいながら改善する大切さを学びました。

11班:学生の声

うまくいかなかったことも、次のデザインにつながる

7月21日、12チームは実践の成果を最終発表会で報告しました。

会場は、実践女子大学・香雪記念館、イオンモール多摩平の森、日野市役所の3拠点。オンラインで各会場をつなぎ、香雪記念館から5チーム、イオンモール多摩平の森から3チーム、日野市役所から4チームが発表しました。

イオンモール多摩平の森や日野市役所では、通り掛かった方が足を止め、学生の発表に耳を傾ける姿もありました。

学生たちは、日野駅商店会の日野一紀会長と、「ひのプロ(日野宿通り周辺『賑わいのあるまちづくり』プロジェクト)」の清水直氏、高畑勝氏、野村智子氏に、それぞれの取り組みを報告しました。

発表したのは、成果だけではありません。

店舗との調整が間に合わなかった。思ったほど人が集まらなかった。置いたものを見てもらえなかった。自分たちの意図と、地域の人の受け取り方が違っていた――。

学生たちは、実際に取り組んだからこそ分かった「うまくいかなかったこと」も、自分たちの言葉で振り返りました。

発表後は各会場の学生が香雪記念館に集まり、日野氏、清水氏、高畑氏、野村氏に安齋利典教授を加え、一色ヒロタカ准教授のファシリテーションのもと、クロストーク形式で講評が行われました。

地域の方と交渉し、対話しながら、最後まで企画をやり遂げたプロセスそのものが貴重な社会経験になったとの評価も寄せられました。

「ものをつくる」から、「人の行動を考える」へ

12チームがつくったものは、それぞれ違います。

しかし、学生のリフレクションには、共通する気づきがありました。

考え抜いた企画でも、その通りに人が動くとは限らない。

自分たちに分かりやすいものが、相手にも分かりやすいとは限らない。

見た目が良いことと、実際に使いやすいことも同じではない。

だからこそ、実際に街へ出て、人の反応を見る。声を聞く。そして、もう一度考える。

活動を重ねる中で、最初はグループでの発言をためらっていた学生が、自分から作業に取り組めるようになったり、外部の方への連絡やインタビューを経験して、相手を意識したコミュニケーションの重要性に気づいたりする姿もありました。

一色准教授は、今回の最大の成果について、学生全員が実際に街へ出て、地域の人々と対話し、一緒に考え、行動したことだと振り返ります。

学生の学びがそのまま社会のアップデートにつながり、街が変わっていく。そんな相乗効果を生み出すことが、この授業の目指す姿です。

教室で生まれた108のアイデア。そのうち12個を、学生たちは実際の街へ持ち出しました。

そこで得たのは、完成したエコバッグやカード、イベントだけではありません。

人がどう感じ、どう動くのかを見つめ、地域の声を受け取りながら、自分たちの考えを変えていくこと。

日野の街での実践を通して、学生たちは「環境をデザインする」という学びを、ものや場所から、人と人との関係へと広げていきました。

学生が授業で日野駅商店会の活性化に挑戦! 「環境デザインプロジェクトa・b」の最終発表会が行われました(7/21) 環境デザイン学部

※このページの掲載内容は、取材当時のものです